理想の着物姿を求めて-とことんまで探し求めた10年間

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2026/01/13

今回は、こだわりの器やお酒、写真作品を扱うギャラリー酒論松むろ(さろんまつむろ)のオーナー松室真一郎さんにお話を伺いました。ご自身で写真を撮ることもお好きで、着る物、使うもの全てにおいて、美へのこだわりをお持ちです。そんな松室さんがどのように着物と出会い、やまもと工藝の仕立てを気に入ってくださったのかお聞きしました。





職業が何であっても、そこにあるのは同じ感覚


——まず、松室さんが今どのようなことをされているのか、教えてください。

松室さん
今は器屋をやっています。月に一回ほど展示や作家の個展をやっていて、それとは別に僕がセレクトしたお酒の販売もしています。あとは写真ですね。商業写真も撮りますし、自分の作品も作っています。

若い頃はファッションの道へ進み、そして「靴」の世界に魅了され、ハイエンド向けの靴磨き職人としてやっていました。今は、僕が惚れ込んだ器やお酒の販売をメインに行っています。

いろいろなことをやっていますが、自分の中ではあまりバラバラな感覚はなくて。
全部、同じ感覚でやっていると思っています。

——そのこだわりや美意識の原点は、どこにあると思いますか。

松室さん
分からないですね。
僕は五島列島の出身で、父親は漁師なんです。親も含めて、周りにファッションとか器とか、そうしたものに興味がある人は一人もいませんでした。

——それでも、かなり早い段階からこだわりがあったようですね。

松室さん
母親に言われるんですけど、3、4歳の頃から、「この服にはこの小物じゃないと嫌だ」と言っていたらしいです。
僕は全然覚えてないんですけど(笑)。

小学校の頃も、みんなジャージなのに、僕だけデニムを履いていたりして。
何故そうなったのかは、今でも分からないです。

——誰かの影響、というわけでもない。

松室さん
ないですね。
ただ、そうじゃないと気持ちが悪かった。ただそれだけでした。


既製品に、どうしても納得できなかった


——ファッションの世界に入っていかれますよね。

松室さん
ファッションに興味を持ち始めたのは小学校3年生の頃からで、スポーツウェアが好きでした。10代の頃にはモードに関心が移り、ロンドンにも行きました。ですが、4〜5年で違和感を感じるようになりました。

——なぜ違和感を感じてしまったんでしょう?

松室さん
モードというのは、女性が主役の世界なんですよね。
華やかで面白いんですけど、自分が美しいと思う「男性像」とは違った。

また、既製品が僕には合わなかった。
僕は背も高くないし、モード界の服ってそもそも大きいんですよね。

——そこで、オーダーの世界へ。

松室さん
そうです。
既製の靴もいろいろ履きましたが、やはり合わなかった。
だったら、3足買うより1足オーダーで作った方がいいなって。

靴磨きの仕事もやっていたのですが、ミリ単位で身体と向き合う世界は、自分にはすごく合っていました。


着物は、クラシックの延長線上にあった


——着物に興味を持ったきっかけは?

松室さん
きっかけらしいきっかけはないですね。
洋服の延長です。

アメカジ、モード、クラシック、そして着物に行きつきました。
日本人の身体に合う服として、自然と興味を持った感じです。

——最初はどんな着物を。

松室さん
父親が持っていた、着ていない着物です。
着てみたら、全然しっくりこない。

それで、「仕立てれば違うのかな」と思って、誂えを始めました。




最初の数店は 「これが、誂え?」と、不信感しかありませんでした


——実際に仕立ててみて、どうでしたか。

松室さん
正直、びっくりしました。
採寸は、シャシャっと数か所だけで終わるんですよ。「はい、終わりです」って。

靴やスーツではミリ単位でやってきたので、
「これで本当に合うものができるのかな」って思いました。

案の定、出来たものはブカブカでした。

——違和感を伝えると?

松室さん
「タオルを入れましょうか」と、補正をするのが当たり前のように言われました。
意味が分かりませんでした。「何のための誂えなんだろう」って、思いました。


10年、20軒。それでも「これだ」と思えるものには出会えなかった


——そこから、長い時間をかけて探し続けたんですね。

松室さん
はい、10年くらいかかりました。
仕立て屋さんは20軒近く回ったと思います。

最初から高い着物を作るわけではなく、浴衣を作ってみたり、長襦袢だけ作ってみたりして、「この人は大丈夫かな」って確かめながら。

有名な呉服屋にも行きました。決して全てが悪いわけではないんです。
でも、「これだ」と思えるところには出会えなかった。


羽織った瞬間に、分かったやまもと工藝の仕立て


——やまもと工藝を知ったきっかけは。

松室さん
妻は日本刺繍家で、催事で山本さんを知っていたんです。
僕はずっと妻に「何かが違う」「こんなもんなのかな…」と諦めかけていたから、
「じゃあ、やまもと工藝さんのところに行ってみたら?」と勧められて。

半分僕の意地ですね。とことんまで探し求めたいと思って行きました。

——最初の一着は。

松室さん
羽織った瞬間に分かりました。
首元、胸元、身体の動き。全てが全然違う。

動いても着崩れしないし、衿止めピンもいらない、直さなくていい。
「こうあるべきだと思っていたものが、ようやく見つかった」って感じでした。


オーダーとは「関係性」だと思う


——一発で完成した、という感覚でしょうか?

松室さん
というよりは、「ここから、面白い話しができる」という感じでしょうか。
オーダーって、本当はそういうものじゃないかと思っていて。

何年も付き合って、相談しながら細かな調整をして、だんだん良くなっていく。
スーツも靴も、全部そうでした。山本さんからは全てに答えが返ってくるんです。

一発でビシッと決まることを求める人もいますけど、本当の面白さは、そこから先にあると思います。





肩の力が抜けた着姿が、一番かっこいい


——理想の着物姿はどんなものですか。

松室さん
「着てます」って感じじゃないのがいいですね。
肩の力が抜けて、自然体で。

だから木綿が好きなんです。
洋服と着物の境目が分からないくらいで、さらっと着ている感じ。

「着物を着て、動いていい」
それが実感できたのは、やまもと工藝の仕立てに出会ってからでした。


どんな人にすすめたいか


——最後に、どんな人にやまもと工藝をすすめたいですか。

松室さん
一つじゃなくて、三つあります。

初めて仕立てる人。
「これでいい」と思い込んでいる、着慣れた人。
それから、着てはいるけど、どこか納得していない人。

妥協したくない人ですね。
身体感覚に正直で、「わかる人にはわかる」世界を面白いと思える人。

そういう人ほど、遠回りの末に、ここに辿り着くんじゃないかと思います。


——まるで職人同士の真剣勝負のようなお話でした。着物に興味のある男性の皆様に松室さんの美の精神をお届けできれば幸いです。

本日は、ありがとうございました。




松室真一郎さん

酒論松むろ(さろんまつむろ)オーナー。主にオンラインで販売し、定期的にギャラリーで展示会を行っています。スケジュールはウェブサイト、またはインスタグラムを確認してください。

公式ウェブサイト:https://utsuwa-matsumuro.jp/

インスタグラム:https://www.instagram.com/salon_matsumuro/

 

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